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  • 執筆者の写真Katsumi USHIYAMA

浜厚真の植物~浜厚真Bioblitz2021報告~

更新日:2022年3月15日

大規模な風力発電事業が計画されている北海道 浜厚真.


浜厚真には広大な自然海岸が広がり,砂浜,草原,湿原,池沼,河川,疎林など多様な環境が,たくさんの生きものたちの生息地となっています.こうした自然豊かな海岸線は周辺ではすでに多くが失われており,浜厚真は希少な生きものたちの最後の生息地として非常に重要な場所となっています.また,渡りを行う生物にとっては,浜厚真は北海道と本州をつなぐ移動ルートにあたり,多くの渡り鳥などが集結する場所になっています.大規模な風力発電の建設と稼働は,多くの生きものに直接的,間接的に深刻な影響をもたらすと懸念されています.


そこで,この唯一性が高く,希少な環境が失われる前に,浜厚真の生物相をきちんと記録し,必要な保全策を検討するため,市民科学による生物相一斉調査~浜厚真BioBlitz 2021~が行われました.


浜厚真の維管束植物


※2022.3.15 リストの修正を行いました.ナガバエビモとしていたものが,再検討の結果ホソバヒルムシロになるなど変更を加え,維管束植物は242種から238種になりました.


2021年7月31日と8月1日にかけて行われた浜厚真BioBlitz 2021で記録された維管束植物は238種となりました(表1).その内,環境省レッドリスト(2020)に記載されている種は10種,北海道レッドリデータブック(2010)に記載されている種は4種でした.


特筆すべき植生としては,全国的に確認記録が乏しいホッカイコウホネやホソバヒルムシロなどが生育する水生植生や,消失,縮小が進行している湿原植生の指標となるジョウロウスゲ,ヒメガマなどが生育する湿原植生が挙げられます.当該地域の水生植生はガン・カモ・ハクチョウ,シギ・チドリなど,渡り鳥を含む水鳥の重要な休息,採餌環境となっているほか,トンボの仲間やカエルの仲間などの多様な水生生物の繁殖環境となっています.また,湿原植生はチュウヒやタンチョウなど希少な鳥類にとって重要な営巣,採餌環境となっているほか,アカモズやマキノセンニュウなど草原を利用する鳥類も利用しています。


海浜域にはハマエンドウなど,浜辺に生育する植物が草原植生を形成しており,草原を営巣,採餌環境として利用する鳥類が多数生息しているほか,植物の蜜や花粉などを利用する昆虫類が多数生息しています.これら鳥類,昆虫類などは花粉の媒介や種子の散布に際して草原植生の形成,維持に深く関わっており,浜厚真当該地域での生物多様性の維持,向上おいて重要な位置づけとなっています.


さらに,これらの水生植生,湿原植生,草原植生は浜厚真の当該地区においてそれぞれが隣接する形でモザイク状に分布しています.これにより,各植生環境間での生物や物質の移動連続性が保たれ,地域の特徴的な景観が形成されています.このことは浜厚真での生物多様性の維持や,地域での自然環境の賢明な利用において重要な要素となっています.


浜厚真の維管束植物リストはこれで完成ではありません.追加種などありましたらぜひご連絡ください.撮影目的の場合は,撮影行為が思わぬ悪影響を招くことがあります.撮影が本当に必要で適切なのかを思案いただき,植物の生態等を十分知った上で,撮影マナーにご注意ください.



浜厚真Bioblitz2021 植物班

矢部和夫(札幌市立大学),新庄久尚(北方草地・草原研究所),秋元美弥子,荒木小梅(北海道大学苫小牧研究林),大越陽(北海道大学),奥田篤志(北大苫小牧研究林),小山内恵子(ネイチャー研究会inむかわ),加藤裕子(宮島沼水鳥・湿地センター),小玉愛子,齋藤央(新篠津ツルコケモモを守る会),鈴木伸子,田中亮輔,富田幹次(北海道大学),松島肇(北海道大学),見原悠美,安田秀子,安田秀司(石狩浜定期観察の会),石橋佳明(株式会社ドーコン)


引用

浜厚真Bioblitz2021 植物班浜厚真の維管束植物~浜厚真Bioblitz2021報告~.石狩川流域湿地・水辺・海岸ネットワーク.https://www.hokkaidoramsarnetwork.com/post/bioblitz2021-flora


※浜厚真の生物相については別途オープンデータサイト等で公開予定ですが,それまでは上記で引用をお願いします.


表1)浜厚真で確認された維管束植物








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